課題番号 ：S-15-MS-1019
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：MgB2超伝導線材の超伝導特性におけるボロン同位体原料粒径の効果
Program Title (English) ：Effect of the boron isotope particle size on superconducting property of MgB2 superconducting wire
利用者名（日本語） ：菱沼　良光
Username (English) ：Y. Hishinuma
所属名（日本語） ：核融合科学研究所
Affiliation (English) ：National Institute for Fusion Science (NIFS)

１．概要（Summary ）
MgB2 超伝導体は MgB2結晶を構成元素の半減期が非常に短い事から、「低放射化超伝導体」という側面も持っているが、その臨界電流特性は既存の Nb-Ti 線材よりも低い状況であり、低放射特性を劣化させずにMgB2超伝導線材の大幅な超伝導特性の向上が核融合等の高エネルギ－分野だけでなく、将来の高分解能MRIや放射化科学分野等への寄与が期待できる材料である。
本研究では完全同位体分離された 中性子照射に対して安定なB-11 同位体粉末原料の最適化を目的に、B-11同位体粉末の材質や粒径の変化に伴う超伝導特性（臨界温度(Tc)及び臨界電流特性(Jc)）の変化を調査した。Jc特性は、B-11同位体粉末原料の平均粒径が細かくなるに従い向上する傾向が明瞭に見られた。しかしながら、未だにB-11粒子が線材組織中に残存しており、更なる組織制御による特性改善が期待できる。
２．実験（Experimental）
平均粒径及び材質の違う3種類のB-11同位体粉末を用意し、通常のPIT法にてMgB2多芯線材を作製した。平均粒径5.700 μm (Sample-A)と1.443 μm (Sample-B)の結晶化粉末と、平均粒径0.863 μm(Sample-C)の非晶質粉末の3種類用意した。3種類の線材について低温拡散熱処理を施し、その一部をSQUID型磁化測定装置（Quantum Design MPMS-7及びMPMS-XL7）に挿入し、5Kにおける磁化履歴を測定した。磁化履歴幅は-3Tから3Tとした。
３．結果と考察（Results and Discussion）
　線材中のMgB2超伝導相の体積分率や結晶粒の持つJcのポテンシャルは、磁化履歴から見積られる磁化幅や磁化幅を基にしたBean modelでおおよそ推測できることが知られている。図1に3種類のB-11同位体粉末を用いたMgB2多芯線材における20Kでの磁化履歴曲線を示す。磁化履歴幅は、B-11同位体粉末の粒径が細かくなるに従って増大する傾向が見られた。一般的にMgB2相は、MgとBの固液拡散を経由し、MgがBに拡散して生成している。つまり、B粉末の粒径が細かくなることで、未反応B粒子が減少し、見かけ上のMgB2超伝導体積分率が大きくなっていると考えられる。
更に、材質で比較した場合では、非晶質粉末の線材において著しい磁化幅が増大しており、非晶質粉末の詳細な検討が必要であると示唆された。
４．その他・特記事項（Others） なし。
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) Y. Hishinuma et al, EUCAS’2015, 7, September, 2015, Lyon, France
６．関連特許（Patent） なし。