利用報告書

MMX型構造を有するベンズアミジナート架橋二核金属錯体の構造解析と磁化率測定
片岡 祐介
島根大学大学院総合理工学研究科

課題番号 :S-15-MS-1028
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :MMX型構造を有するベンズアミジナート架橋二核金属錯体の構造解析と磁化率測定
Program Title (English) :Structural analyses and magnetic susceptibilities of MMX-type Dinuclear
Benzamidinato Complexes
利用者名(日本語) :片岡 祐介
Username (English) :Y. Kataoka
所属名(日本語) :島根大学大学院総合理工学研究科
Affiliation (English) :Interdisciplinary Graduate School of Science and Engineering.

1.概要
 一次元MMX型構造を有する二核金属錯体は、ディスクリートな金属錯体には観測されない興味深い磁気的性質や電気伝導性を示す為、過去30年間精力的に研究が行われてきた。MMX型二核金属錯体の興味深い点は、二核金属ユニットの軸位に配位するハロゲンイオンの種類のみならず、二核金属ユニットの分子内架橋配位子の種類や置換機の嵩高さ・電子吸引及び供与性によって、二核金属ユニットとハロゲンイオン間の結合角と結合距離が変化し、その構造の違いが錯体全体の電子状態及び物性に大きく影響をもたらす点であると言える。これまでに様々な二核金属ユニットからなるMMX型二核錯体が報告されてきたが、二核ロジウムユニットを骨格(図1b)に用いたMMX型錯体の報告例は極めて少ない。その理由は、二核ロジウムユニットのロジウムの酸化数は2価が安定であり、MMX型構造を形成する為には、錯体全体を1電子酸化した混合原子価のロジウムユニット(II, III)を取る必要がある事に由来する。この背景に対し、我々は偶然にもベンズアミジナート(図1a)を分子内架橋配位子として用いる事で、混合原子価二核ロジウム(II, III)ユニットを有するMMX型構造体を合成することができた。本研究では、それらの合成錯体の単結晶X線構造解析および磁化率測定を行い、それらの錯体の構造と磁気的性質の関係性を明らかにする事を目指した。 

図1. (a)ベンズアミジナートおよび(b)ロジウム二核
錯体の分子構造
2.実験
単結晶X線回折測定は、単結晶X線回折装置RIGAKU MERCURY CCD-1, CCD-2及びCCD-3(微小結晶用)を使用した。測定温度は、−123℃に設定した。単結晶は、クライオループ及び流動パラフィンを使用してゴニオメーターヘッドに固定した。 反射データは、Crystal Clear (RIGAKU)で処理し、その後、Crystal Structure (RIGAKU)およびPLATONなどのソフトウェアを使用して構造解析を行った。磁化率測定は、SQUID型磁化測定装置 Quantum Design MPMS-7及びMPMS-XL7を使用し、2-300 Kの温度領域で測定を行った。

3.結果と考察
単結晶X線構造解析の結果、合成したロジウム二核錯体はハロゲンイオンの種類に依らず、1次元のMMX型を形成している事が確認できた。また、そのRh-X-Rh結合角はハロゲンイオンの原子番号が増加するにつれ、狭まる事が確認できた。磁化率測定の結果、合成した錯体全てに、S = 1/2に由来する磁化を確認する事ができた。以上の結果から、得られた錯体は、ハロゲンイオンの種類に依らず、混合原子価二核ロジウム(II, III)である事が推測された。

4.その他・特記事項
本研究の一部は、科研費(15K17897, 15H00877)による補助によって行った研究である。

5.論文・学会発表
(1) 三上沙紀, 片岡祐介, 川本達也, 御厨正博, 半田真, 錯体化学会第65回討論会, 平成27年9月21日
(2) 三上沙紀, 片岡祐介, 川本達也, 御厨正博, 半田真, 日本化学会第96春季年会, 平成27年3月24日

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