利用報告書
課題番号 :S-16-JI-0016
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :MS分析による糖質分解酵素反応の解析
Program Title (English) :Analysis of the reactions of glycan-degrading enzymes by mass-spectrometry
利用者名(日本語) :松﨑千秋
Username (English) : Chiaki Matsuzaki
所属名(日本語) :石川県立大学生物資源工学研究所
Affiliation (English) :Research Institute for Bioresources and Biotechnology, Ishikawa Prefectural
University
1.概要(Summary)
糖質分解酵素の反応基質(糖鎖・糖ペプチド)をMSによって構造分析し、酵素反応の進行程度を評価する。
2.実験(Experimental)
糸状菌由来のエンドグリコシダーゼ(Endo-M)の糖鎖転移活性を利用し以下aおよびbに糖鎖付加し分析を行った。a)抗HIV治療薬VIRIPを固相合成法によって合成し、Endo-Mによる糖鎖転移反応を行った。b)サイトカインの一種であるインターフェロンγ(IFNG)およびインターロイキン3(IL3)を、メタノール資化酵母Pichia pastrisを用いて発現し、加水分解酵素によって酵母由来の不均一な糖鎖を切断後、Endo-Mによって均一なヒト型糖鎖の転移付加を試みた。糖鎖転移反応が進行したか確認を行うためMALDI-TOF MSおよびMALDI-TOF/TOF MS (UltrafleXtreme JA-1, Bruker Daltonics) による分析を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
a) 20アミノ酸残基から構成されるVIRIP誘導体を固相合成法により高収率で合成することができた。その後Endo-Mの改変酵素Endo-M N175Qを用いることによって効率よく糖鎖付加する事に成功した。得られた化合物の抗HIV作用をヒトT細胞を用いてin vitro実験によって評価したところVIRIPには大きな糖鎖が付くほど薬効が低下する傾向があることが分かった。かさ高い糖鎖が活性部位を覆う形となり薬効が低下したと考えられる。
b) Codon usageを酵母用に最適化したIFNGおよびIL3遺伝子を酵母用ベクターpPICZαAに導入し酵母KM71にエレクトロポレーション法で導入した。メタノール含有培地によりタンパク質の発現誘導を行ったところ培養2日目で目的タンパク質が発現していることをウェスタンブロッティングによって確認を行った。糖加水分解酵素Endo-Hによって糖鎖を分解後、MALDI-TOF MSで確認を行ったところIFNGには糖鎖が2か所、IL3には1か所付加していることが確認できた。最後にEndo-Mによって糖鎖転移反応を行い、質量分析で糖鎖転移反応の進行を確認したところ転移反応が全く進行しないことが分かった。これはEndo-M自体が大きなタンパク質であるため糖鎖転移先の受容体部分の立体構造によってはアクセスできないと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
MS分析技術支援を賜りました宮里朗夫博士に感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
学会発表
1)トリアジン型脱水縮合剤とEndo-Mを用いた糖タンパク質の合成. 苫米地祐輔.第2回ENGase研究会(高知), 平成28年8月31日.
2)酵母を発現宿主とした組換え糖タンパク質の調製とEndo-Mによる糖鎖構造の均一化. 苫米地祐輔(石川県立大学)、加藤紀彦(石川県立大学、京都大学)、坂口広大(石川県立大学)、千葉靖典 (産業技術総合研究所)、熊田純一(東京化成工業)、松崎祐二(東京化成工業)、山本憲二(石川県立大学).日本農芸化学会2017年度大会(京都), 平成29年3月19日.
6.関連特許(Patent)
なし。







