利用報告書

NMRを用いたアニオン交換形燃料電池用アイオノマーの分子構造解析
阿部 寛樹1)
1) ダイハツ工業株式会社

課題番号 :S-16-MS-1093
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :NMRを用いたアニオン交換形燃料電池用アイオノマーの分子構造解析
Program Title (English) :Molecular Structure Analysis of Anion Exchange Ionomer by NMR
利用者名(日本語) :阿部 寛樹1)
Username (English) :H. Abe1)
所属名(日本語) :1) ダイハツ工業株式会社
Affiliation (English) :1) DAIHATSU MOTOR Co., Ltd.

1.概要(Summary )
次世代のパワーデバイスとして期待される燃料電池を多用途に拡げていくには、燃料の多様化が重要であり、その中でも液体燃料は高いエネルギー密度だけでなく、エネルギー需給両側において取扱いが簡便となることがあげられる。
我々は負極側燃料として水加ヒドラジンに注目し、燃料電池用材料とシステムの開発を行っている。課題の一つとして膜電極接合体の低い耐久性があげられる。その中でも、アイオノマーの耐久性向上が必要と考えている。
そこで、独自に合成したアニオン交換形アイオノマーを用いて、耐ラジカル評価方法として知られるフェントン試験を実施し、試験前後のアイオノマーの分子構造をNMRにて帰属することで、ラジカル劣化部分を特定し、劣化メカニズムの解明を図る。

2.実験(Experimental)
[利用設備]核磁気共鳴装置 JEOL JNM-ECA600
[実験方法]
サンプル構造を図1、劣化条件を表1に示す。

上記方法で作製した3サンプルに対して、1H-NMR、13C-NMRを実施し、ラジカル劣化前後でのアイオノマーの分子構造を帰属した。なお、重溶媒には重クロロホルムを使用した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
各サンプルの1H-NMRの結果を図2に示す。図2から分かるように、アンモニウムイオンのメチル基(●)の減少と、主鎖のメチレン基、メチン基(●)の増加を観察。

このことから、今回のポリマー種では図3に示す①と②の結合が優先的に切断される(①>②)ことが分かった。これは、図3 *部の炭素がsp2混成軌道の炭素の中で最も電子密度の低い炭素であるためと推定。
今回使用したアイオノマーは、
モデル構造であるため、次回は
より実仕様に近いアイオノマーを
用いて構造解析をすることで、
高耐久材料開発の設計指針を得る。

4.その他・特記事項(Others)
機器利用の際に設備使用方法や解析方法をご教示いただいた、分子科学研究所 機器センター 野田一平コーディネーター・長尾春代技術支援員には感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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