利用報告書
課題番号 :S-16-MS-0016
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :NMR解析による動的情報を活用した抗体工学への応用
Program Title (English) :Application of NMR measurement to utilize protein dynamics in antibody engineering
利用者名(日本語) :長門石曉1), 津本浩平1)
Username (English) :S. Nagatoishi1), K. Tsumoto1)
所属名(日本語) :1) 東京大学大学院工学系研究科
Affiliation (English) :1) School of Engineering, The University of Tokyo
1.概要(Summary )
抗体-蛋白質抗原間の特異的な相互作用は、柔軟かつ構造相補性が明瞭でない結合界面をしている。そのため、抗体医薬品開発において重要な結合ことも多い。親和性を向上させる改変型抗体の設計において、パーツを付加する・付け替えるような戦略では対処できないのが現状である。これは蛋白質間の相互作用における“アミノ酸レベルでのダイナミクス”と“親和性創出”に関する因果関係を精査しなければならない。そこでNMR解析からの動的情報,揺らぎ情報に基づく分子設計が可能ではないかと考えた。
本研究では、VHH(ドメイン抗体)を標的とし、NMRを活用して蛋白質抗原に対する分子認識機構の解明を行う。我々の研究グループは、抗体-抗原間相互作用において従来から物理化学的(熱力学的解析、速度論的解析)なアプローチより、その特性創出に関する分子認識機構の解明に取り組んできた。これらの知見と、本NMR解析における知見に基づいて、抗体の親和性向上のデザインにつながる研究を指向している。これより、VHHの応用を指向した親和性向上のためのアミノ酸設計に関する指針を提案することを目的とした。
2.実験(Experimental)
一連のVHHについて分子科学研究所800MHz溶液NMRを用いた動的構造解析を行うため、15N標識を施したVHHのサンプル調整を行った。大腸菌を用いた大量発現系により、高収量でVHHを取得することができ、今後のNMR計測に十分な量を調製することができた。4つのVHHについてNMRを用いた計測を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
15N標識を施したVHHの1H15N-HSQCスペクトルは良好な分散を示した。抗原抗体認識領域以外のフレームワームについて同じ配列を有するVHHであっても、分子種によってはスペクトルが大きく異なることが明らかとなった。(図)今後はスペクトルの帰属や抗原の滴定を行い、動的構造解析に向けた準備を進める。
図:青、赤、緑はそれぞれ異なるVHHの1H15N-HSQCスペクトル。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし