利用報告書
課題番号 :S-13-NU-0056
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Paddle Wheel 構造を持つ正方形型大環状金属錯体の合成と配向組織化
Program Title (English) :Synthesis and Self-Assembled Orientation of Discrete Molecular Square Consisting of Paddle Wheel Complex
利用者名(日本語) :河野慎一郎
Username (English) :Shin-ichiro Kawano
所属名(日本語) :名古屋大学 大学院理学研究科 田中研究室
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Nagoya University
1.概要(Summary)
本研究は、多孔性金属錯体の一次元部分構造であるナノチャネルを合成し、溶媒への可溶性、配向組織性を示す、ナノ空間を内包したソフトマテリアルを構築することを目的としている。多数のアルキル側鎖を導入したランタン型(Paddle Wheel型)Rh二核錯体の自己組織的な配位子交換反応を用いて、大環状四角形錯体と大環状三角形錯体をそれぞれ合成した。さらに、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を軸配位子として用い、これらの環状錯体を一次元的に架橋した分子チューブを構築した。これらの分子チューブは有機溶媒に可溶であり、基板上のキャストフィルム内で配向することが偏光顕微鏡(POM)観察および斜入射X線回折(GIXRD)測定から明らかとなった(図1)。そこで、基板表面での分子組織構造を詳細に評価するために、走査型顕微鏡(SEM)を用いた表面のモルフォロジー観察を行うことを目的とした。
2.実験(Experimental)
実験装置には、JEOL社製 走査型電子顕微鏡(JSM-7500F)を用い、ガラス基板上にキャスト法により調製した試料に、Osコーティングして試料観察を行った。試料には、大環状三角錯体とDABCOを混合して形成させた分子チューブと、大環状四角錯体とDABCOを混合して形成させた分子チューブから調製した薄膜について検討した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
本研究では、多孔性金属錯体の一次元部分構造であるナノチャネルを合成し、POM観察で高配向していると確認した分子組織を持つ試料について検討した。
大環状三角錯体とDABCOから構築した分子チューブのキャストフィルムについてSEM観察を行ったところ、直径1 mのファイバーが一方向に密集している様子が広範囲(10 m x 10 m)にわたり観測された。これらは、POMにより観察された周期構造と良く一致していた。
また、大環状四角錯体とDABCOから構築した分子チューブは、筋状の構造体が観測された。これらは、直径2 mのファイバーが一方向に密集している様子が広範囲(200 m x 200 m)にわたり観測された。
以上の結果より、大環状金属錯体と架橋配位子を用いて合成した一次元組織体を、基板上にキャストして調製した試料について、SEM観察により、ファイバー状の分子組織構造を観察することに成功した。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞: 林 育生 技術職員
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 佐々木阿子・河野慎一郎・田中健太郎, 日本化学会第94回春季年会(口頭発表), 平成26年○3月27日
6.関連特許(Patent)
なし。







