利用報告書

PNAの構造解析
Panuwat Padungros
Chulalongkorn University (Thailand)

課題番号 :S-16-MS-0050
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :PNAの構造解析
Program Title (English) :Structural Analyses of Pyrrolidinyl Peptide Nucleic Acid (PNA)
利用者名(日本語) :
Username (English) :Panuwat Padungros
所属名(日本語) :
Affiliation (English) :Chulalongkorn University (Thailand)

1.概要(Summary )
ペプチド核酸 (Peptide Nucleic Acid: PNA)はDNAのミミックとして、現在注目が集まる人工化合物である。その特徴は、DNAと同じプリン・ピリミジン塩基を持つため、DNA-PNA間、PNA-PNA間でDNA同様の二重らせん構造の形成能を保持しながら、DNA中のリン酸―デオキシリボースのリン酸エステル結合を、アミノ酸の繰り返しによるアミド結合へと置換することで高い熱安定性を有する点にある。また、ヌクレアーゼ、プロテアーゼに認識されにくく、高い耐酵素活性を有し高い生体安定性を有するため、生物学、医療分野への応用が期待されている。機能面で注目を受ける一方で、合成化学的な手法を用いても大量にサンプルを調製する方法が確立しておらず、それに起因して、機能を理解する上で基盤となる構造解析例は少ない。今回、我々はDNA中のデオキシリボースをプロリンに置換し、リン酸エステル構造をアミド結合を有するリンカーへと置換した、リジットなPNA二種類を開発し、NMRを用いることで、単量体の構造決定と二重らせんを形成した際の構造解析を試みた。

2.実験(Experimental)
・利用した主な装置:800MHz NMR装置
二種類のPNAサンプル(CD-PNA、TD-PNA)に対して、D20中における一次元NMR(1H)、二次元(1H-1H COSY, 1H-13C HSQC, 1H-13C HMBC, NOESY)実験を行った。また、D2O-H2O混合溶媒を用いて、NH基、OH基を検出する検討も行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
各NMR実験において、構造異性体であるCD-PNA、TD-PNAそれぞれの、モノマーにおける高解像度なスペルトルデータを取得することに成功した。今後、原子レベルでモノマー構造の帰属および二重らせん構造の解析を行っていく上では、同位体標識など、PNA構造中へ何らかの目印を入れることが必要である。このことによって、分子中に複数存在するプロリン残基、シクロペンタン残基の影響による複雑なスペクトルを原子レベルで帰属し、二重らせん構造の解析を推進することが期待できる。

図.CD-PNAの1H-13C HSQCスペクトル

4.その他・特記事項(Others)
本研究は谷中冴子博士, 加藤晃一博士(岡崎統合バイオサイエンスセンター)との共同研究として実施した。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Kriangsak Faikhruea, Tatsuya Suzuki, Saeko Yanaka, Takumi Yamaguchi, Panuwat Padungros, Tirayut Vilaivan and Koichi Kato
総研大アジア冬の学校2016 2016年12月15日 (岡崎)

6.関連特許(Patent)
なし。

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