利用報告書
課題番号 :S-17-MS-1007
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Ru触媒を用いた単層カーボンナノチューブの作製
Program Title (English) :Synthesis of Single-walled carbon nantoubes using Ru catalysts
利用者名(日本語) :藤井貴之1), 丸山隆浩2)
Username (English) :T. Fujii1), T. Maruyama2)
所属名(日本語) :1) 名城大学大学院理工学研究科, 2) 名城大学理工学部
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science and Technology、Meijo University, 2) Department of Applied Chemistry、Meijo University
1.概要(Summary )
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)の電子状態はその構造に依存する。そのため,エレクトロニクス応用の実現には直径やカイラリティのそろったSWCNT作製技術の開発が必要である。本研究では,高融点金属であるRuを触媒に用いることで,直径やカイラリティの均一性の高いSWCNTの作製を試みた。
2.実験(Experimental)
SWCNT作製は,高真空タイプのコールドウォール型化学気相成長(CVD)装置を用いて行った。触媒にはAl2O3/SiO2/Si基板上に堆積させたRu粒子を用い,炭素原料にはエタノールを用いた。作製したSWCNTは,ラマン分光,走査電子顕微鏡(SEM)および透過電子顕微鏡(TEM)により評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
エタノール圧力を最適化することにより,700℃から400℃の範囲の作製温度において,SWCNTを成長させることに成功した。各作製温度において,基板表面に蜘蛛の巣状のSWCNTが生成している様子がみられたが,温度が低くなるにつれ,生成量が減少した。図1に,400℃で作製したSWCNTのラマンスペクトルを示す。
図1 作製温度400℃で成長させたSWCNTのラマンスペクトル.測定には4種類の励起波長のレーザを用いた.
波長785 nmで測定したスペクトルのみ,GバンドとRBMピークが観測された。SWCNTのラマンスペクトルは,共鳴条件下で,RBMピーク強度が増大することが知られており,波長785 nmでのみRBMピークが観測されたことは,直径やカイラリティ分布のそろったSWCNTがRu触媒から生成したことを示唆している。また,波長785 nmで測定したラマンスペクトルのG/D比は4以上あり,作製温度が低いにもかかわらず,比較的結晶性の良いSWCNTが生成したと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は,私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「グリーンイノベーション研究拠点形成プロジェクト」の支援を受けました。また,SEM観察では中尾聡研究員のお世話になりました。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) T. Fujii, H. Kiribayashi, T. Saida, S. Naritsuka and T. Maruyama, Diamond Relat. Mater. Vol. 77 (2017) p. p. 97-101.
(2) T. Fujii, T. Okada, T. Saida and S. Naritsuka, MRS Advances, Vol. 3 (2017) p. p. e1-e7.
(3) T. Fujii, T. Okada, T. Saida, S. Naritsuka and T. Maruyama, IUMRS-ICAM 2017, 平成29年8月31日
(4) T. Fujii, T. Okada, T. Saida, S. Naritsuka and T. Maruyama, 2017MRS Fall Meeting & Exhibit, 平成29年11月28日
6.関連特許(Patent)
なし