利用報告書
課題番号 :S-15-OS-0033
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Siナノ結晶薄膜の電気伝導過程の解明
Program Title (English) :Study on Electrical Transport of Silicon Nanocrystal Solid
利用者名(日本語) :加納 伸也
Username (English) :S. Kano
所属名(日本語) :神戸大学大学院 工学研究科 電気電子工学専攻
Affiliation (English) :Graduate School of Engineering, Kobe University
1.概要(Summary)
粒径がnmオーダーである半導体ナノ結晶の機能開発とその素子応用が盛んに研究されている。半導体ナノ結晶を塗布して形成した塗布膜は、塗布プロセスで使う半導体インクとして利用できる可能性がある。本研究では、シリコン(Si)のナノ結晶コロイド溶液を塗布して形成した、ナノ結晶塗布膜の電気伝導過程の解明をめざして実験を行った。局所的な電気伝導特性が観察できる導電性原子間力顕微鏡(c-AFM)を利用し、塗布膜中のキャリア移動のプロセスを検証した。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
走査型プローブ顕微鏡、接触式膜厚測定器
【実験方法】
同時スパッタリング法を用いてSiナノ結晶コロイドのメタノール溶液(参考文献1)を作製した。使用したSiナノ結晶の平均粒径は7 nmとした。スピンコートによりSiナノ結晶コロイド溶液をITO付SiO2基板上に堆積した。スピンコート条件は、500 rpm (5 sec)→2000 rpm (120 sec)とした。スピンコートで形成したSiナノ結晶塗布膜の膜厚は、接触式膜厚測定器で測定した。形成したナノ結晶塗布膜の局所的な電気伝導特性を、c-AFMで測定した。カンチレバーはSI-DF3-Rを使用した。印加電圧は、ITO側が正となるように印加した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
まず、接触式膜厚測定器によりSiナノ結晶塗布膜の高さを測った結果、スピンコート膜厚は50 nmと見積もられた。これにより、本スピンコート条件でのナノ結晶塗布膜の厚さが明らかとなった。 Siナノ結晶塗布膜上の表面像と、表面形状像と同時に取得された電流像を図1に示した。印加電圧は+10 Vとしている。表面形状像の白い球体が、Siナノ結晶を表している。Siナノ結晶の高さはおよそ10 nm以下であり、透過型電子顕微鏡で得られた粒子の平均粒径とよく対応している。電流像において、Siナノ結晶塗布膜上の凹凸のうち、膜厚が比較的薄いところで局所的に電流が流れていることがわかる。トンネル電流がトンネル距離に著しく依存することを考慮すると、この結果は、Siナノ結晶表面の酸化膜に由来するトンネル障壁が、キャリアの移動を妨げていることを示唆している。
Figure 1 (Left) Topography and (Right) current images of a silicon nanocrystal solid. It is noted that there is an offset current around -30 pA.
4.その他・特記事項(Others)
・参考文献
[1] H. Sugimoto, et al. J. Phys. Chem. C 117 11850 (2013).
・謝辞
接触式膜厚測定器と走査型プローブ顕微鏡の補助を行っていただきました、大阪大学ナノテクノロジー設備供用拠点の皆様に感謝申し上げます。本研究は科学研究費補助金 研究活動スタート支援(No. 26886008)、公益財団法人カシオ科学振興財団の助成を受けたものである。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。







