利用報告書
課題番号 :S-16-MS-2006、2023
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :STXMによる火星隕石ナクライト中の炭素成分の分析
〜官能基組成の解明と分布および産状の調査〜
Program Title (English) :The investigation of carbon components in Martian meteorite Nakhlite by STXM ~functions analysis, distribution and occurrence~
利用者名(日本語) :菅大暉1)、左合なつみ1)、宮原正明1)、大東琢治2)、稲垣裕一2)、
山口亮3)、大谷栄治4)
Username (English) :H. Suga1), N. Natsumi1), M. Miyahara1), T. Ohigashi2), Y. Inagaki2),
A. Yamaguchi3), and E. Ohtani4)
所属名(日本語) :1) 広島大学大学院理学研究科, 2) 分子研・UVSOR施設, 3) NIPR,
4) 東北大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science, Hiroshima University, 2) UVSOR Synchrotron, 3) NIPR, 4) Graduate School of Science, Tohoku University
1.概要(Summary )
火星起源隕石ナクライト(Nakhlite)に記録された水―岩石反応生成物をSTXMによる化学種解析に基づき明らかにした。Nakhliteから様々な種類の変質鉱物(炭素,鉄,塩素含有)が見出された。それらの生成環境を考慮すると,Nakhliteが火星の北半球に存在した海地域に由来する可能性が明らかになった。
2.実験(Experimental)
実験試料としてはYamato 000593及びNakhla隕石を使用した。これらの試料は事前にFE-SEM観察とラマン分光分析を行い,STXM分析に呈する変質組織を数か所抽出した。STXM分析を行う部分をFIB加工装置で薄膜に加工し,その薄膜をUVSORのBL4Uにて測定した。STXM分析後に薄膜のTEM観察も行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
火星表層にかつて水が存在したことは現在広く受け入れられている。従って火星表層の岩石には,かつて存在した水と岩石の反応(水質変成)が記憶されている。火星由来の隕石の内,Nakhliteと呼ばれるグループには特にその水質変成が明瞭に記憶されていると言われている[例えば1, 2]。本課題ではNakhliteの微細な水質変成組織を従来の電子顕微鏡観察やラマン分光分析だけでなく,STXMを用いた化学種や結合状態解析の点から火星表層で起きた水と岩石の反応を明らかにし,火星の水の特徴(pH,温度,溶存イオン種等)を解き明かす計画である。
今年度は特にNakhliteの主要構成鉱物であるオリビンに存在する水―岩石反応組織の1つイディングサイトに着目した。年度内に全ての分析を終えることはできなかったが,様々な種類の変質鉱物(ジャロサイトやライフーナイト等)を見出すことに成功した。また,水―岩石反応実験の結果と比較検討すると,Nakhliteが火星の北半球に存在した海地域に由来する可能性が明らかになった。
4.その他・特記事項(Others)
[1] T. Noguchi et al., J. Geophy. Res. 114 (2009) E10004.
[2] L.M. White et al., Astrobiology 14 (2014) 170.
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 菅大暉、左合なつみ、宮原正明、大東琢治、稲垣裕一、山口亮、大谷栄治. JpGU-AGU Joint Meeting 2017. 平成29年5月23日.
(2) 宮原正明、菅大暉、大谷栄治、大東琢治、稲垣裕一.
JpGU-AGU Joint Meeting 2017. 平成29年5月23日.
6.関連特許(Patent)
なし







