利用報告書

Yb2分子のレーザー分光
馬場正昭
京都大学大学院理学研究科

課題番号 :S-16-MS-1037
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Yb2分子のレーザー分光
Program Title (English) :Laser Spectroscopy of Yb2 Molecule
利用者名(日本語) :馬場正昭
Username (English) :Masaaki Baba
所属名(日本語) :京都大学大学院理学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Science, Kyoto University

1.概要(Summary )
量子化学理論計算によって、イッテルビウム二原子分子(Yb2)のポテンシャルエネルギー曲線が右図のように予測されている。これを参考にして、これまでの施設利用研究で、スペクトル測定を試み、解離限界に近いところの吸収スペクトルは確認できた。しかしながら、最も強いはずの可視領域のスペクトルを観測することができていなかったので、本施設利用研究では、新たに金属専用の高温ノズルを開発し、高濃度のYb2の分子線を生成して、ナノ秒パルス色素レーザーを用いて高分解能スペクトルの測定を試みた。

2.実験(Experimental)
本研究では、装置開発室にも技術支援をして頂き、650℃の高温でも安定に動作するオーブンノズルと分光測定用の真空装置をを開発した。これを用いてYb2の高濃度の分子線を生成し、機器センター所有の大出力ナノ秒パルス色素レーザーシステム(Coherent, Lambda Physik Compex Pro 110, LPD3002)によって高感度に分子からの発光を検出して、高分解能けい光励起スペクトルを測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
数回の出張を重ねて条件設定を変えて数回測定を試み、Yb2分子の電子遷移における振動構造を見出した。大まかに、理論計算のポテンシャルから予測される結果と一致しており、現在細かい解析を進めている。ただし、励起状態のエネルギー準位を明らかにするには、広い波長範囲でのスペクトル測定が必須であり、今後も施設利用研究を継続して進めていきたい。また、検出するけい光の波長領域が限定するため、分解能の高い分光器を使わなければならないことも明らかとなり、単一光子計測法や高速データ処理システムの開発も必要となり、これらの作業も同時に進めていく予定である。

4.謝辞
本研究の遂行に当っては、山中孝弥技術職員と中川信代事務支援員に大変お世話になりました。また、金属工作を指導して頂いた装置開発室の皆様に深く感謝いたします。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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