利用報告書
課題番号 :S-17-NI-0036
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :Z型六方晶フェライトの高温磁化挙動
Program Title (English):Magnetization behavior of a Z-type hexaferrite at elevated temperatures
利用者名(日本語) :藤井俊旭
Username (English) :Toshiaki Fujii
所属名(日本語) :名古屋工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English):Graduate School of Engineering, Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
六方晶フェライトはその結晶構造において、S、R、Tの3種の構造ユニットの積層様式の違いにより分類され、Z型はS-R-S-T…の積層構造をもつ。最近、Z型六方晶フェライトにおいては、室温、弱磁場での電気磁気効果が発見され[1]、注目を集めている。本研究グループではフラックス法によりSr3Co2Fe24O41の単結晶試料を作製し、物性及び結晶構造の両面から解析評価することで、本物質の物性の発現機構を明らかにしようとしている。本研究課題では、Z型六方晶フェライトに対して、結晶方位毎の磁化の温度依存性を評価し、その磁気異方性を評価した。
2.実験(Experimental)
フラックス法で育成したZ型六方晶フェライトSr3Co2Fe24O41の単結晶試料について、六方晶格子[100][120][001]の3方向にそれぞれ100Oeの磁場を印加した状態で室温から800 Kまで変化させた際の磁化の温度依存性に関して測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
[001]に磁場を印加した測定では410K、490K、680K付近で磁気転移と考えられる磁化の挙動が観測された。同様に[100]および[120]方位でも挙動は異なるが上記の温度で磁化の変化が観測された。これらの転移点はそれぞれ、既報の論文[2]を参考にすると、低温側から磁気秩序構造に関する転移、スピン再配列転移、キュリー点であると考えられる。
また、磁化の大きさから220℃以上ではc軸への一軸異方性が、220℃以下ではc軸と垂直方向、いわゆる面内方向への磁気異方性が推察された。さらに、220℃以下において、[100]と[120]方向での磁化の温度依存性を比較すると挙動に関しては類似していたが、その磁化の大きさが [100]方向の方が[120]方向より大きく面内においても磁気異方性があることが確認された。
図1 六方晶格子[100][120]方位に磁場を100Oe印加したときの磁化の温度依存性
4.その他・特記事項(Others)
【参考文献】
[1] Y. Kitagawa et al., Nature Mater. 9, 797 (2010).
[2] M. Soda et al., Phys. Rev. Lett. 106, 087201 (2011).
本研究に関して名古屋工業大学大学院工学研究科の日原岳彦教授にご協力いただきました。ここに記し深く感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。