利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0012
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :ZnFe2O4 薄膜の 57Fe メスバウアー分光測定
Program Title (English) :Mössbauer spectra of ZnFe2O4 Thin Film
利用者名(日本語) :新海圭亮、安達信泰
Username (English) :K. Shinkai, N. Adachi
所属名(日本語) :名古屋工業大学 先進セラミックス研究センター
Affiliation (English) :Advanced Ceramics Reserch Center, Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
可視光領域に透過性のあるZnFe2O4結晶は、反強磁性を示すことで知られているが、有機金属分解法で作製したZnFe2O4は、結晶化条件により強磁性を示す。強磁性の原因として、八面体位置にあるFe3+の一部が四面体位置のZn2+と置換することでフェリ磁性が発現することとして考えられるが、4面体位置に置換されたと考える鉄イオンの価数が2価に変化するか3価の状態なのかでフェリ磁性の機構が異なる。そこでメスバウアー分光を用いて、その評価を試みた。
2.実験(Experimental)
薄膜は、有機金属分解法を用いて、シリカガラス基板上にスピンコーティングし作製した。溶液滴下後は、100℃で乾燥し、300℃で仮熱処理を行った。必要な膜厚までこの工程を繰り返した後、熱処理結晶化させた。焼成温度が強磁性の発現に与える影響を調べるため、焼成時間を1時間、焼成温度を480℃から600℃で変化させてそれぞれ作製した。作製した試料に対し、室温にて57Feメスバウアースペクトルを測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
膜厚はFE-SEMの断面観察により330nm程度であった。結晶化した薄膜は、ZnFe2O4単相のスピネル型構造を示す多結晶回折ピークのみが観測された。温度4Kでの磁化曲線は、どの試料においても保磁力は700Oe程度であり、磁気特性は同じ磁性相に由来すると考えられる。10kOeの印加磁界において、495℃_1hでは34.1emu/g、500℃_2hでは44.5emu/gの磁化を示した。また、480℃_12hでは37.2emu/gの磁化を示したことから、大きな磁化を示す焼成条件は、焼成温度500℃付近・焼成時間2h程度から焼成温度480℃付近・焼成時間12h程度の間にあると考えられる。大きな磁化を示した試料について、メスバウアー分光を室温にて測定したところ、Fig.1に示すスペクトルが得られた。フィッティングパラメータは、同位体シフト(IS):0.35(mm/s)、四重極分裂(QS):0.46(mm/s)となり、Fe3+ の典型的な同位体シフト値を示したことから、Fe2+は存在しないことが明らかになった。このことから、ZnFe2O4の強磁性は、Fe3+が四面体配置に置換される、すなわち逆スピネル構造をとることから生じると考えられる。また、Zeeman分裂は見られないことから室温では常磁性状態であることも確かめられた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 新海圭亮・中田勇輔・安達信泰, 日本セラミックス協会 第33回秋季シンポジウム, 平成2年9月2日.
(2) 安達信泰・新海圭亮・中田勇輔, 第44 回日本磁気学会学術講演会, 平成2年12月15日
(3) Shinkai Keisuke, Yusuke, Nakata, Nobuyasu Adachi, MRM Forum 2020, 平成2年12月8日
(4) 安達信泰・新海圭亮・中田勇輔, 日本セラミックス協会2021年年会, 平成3年3月23日
6.関連特許(Patent)
なし
| Fig 1. Mössbauer spectrum of ZnFe2O4 at RT.
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