利用報告書

化学的処理を用いたカップ積層型カーボンナノチューブの長さ制御とその構造解析
東城 友都
豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系

課題番号 :S-14-SH-0046 (NPS14073 試行的利用)
利用形態 :共同研究型支援
利用課題名(日本語) :化学的処理を用いたカップ積層型カーボンナノチューブの長さ制御とその構造解析
Program Title (English) :Structural analysis of length-controlled cup-stacked carbon nanotubes with a chemical treatment.
利用者名(日本語) :東城 友都
Username (English) :Tomohiro Tojo
所属名(日本語) :豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系
Affiliation (English) :Department of Electrical and Electronic Information Engineering,
Toyohashi University of Technology.

1.概要(Summary )
リチウムイオン二次電池の負極材料として、カーボンナノチューブ(CNT)を使用した場合、現行負極の黒鉛に比べて充放電容量が2倍以上高くなるが、リチウムイオンの拡散経路が長く、ハイパワー用途において高速充放電が困難である。そこで、長さ制御がCNTよりも容易なカップ積層型CNT (CSCNT)に着目し、CSCNT長の制御方法の開発と構造解析を目指した。

2.実験(Experimental)
株式会社GSIクレオス提供のCSCNT(PS, LHT, HHT)に対して、構造内に残存する金属触媒および非晶質炭素の除去を行なった。この際、10Mの塩酸に試料を投入し、24時間の撹拌を行なった後、酸処理前後の構造解析を行なった。また酸処理後、結晶性を高めるためにAr雰囲気下、800℃、1hの熱処理を行ない、構造解析を行なった。
上記処理後のCSCNTのカップ剥離を行なうために、80 mM リチウムナフタレニド(Li-Naph)/THF溶液中で1週間、強力に撹拌を行ない、構造解析を行なった。
構造解析にはSEM, XRD, Raman分光装置を用い、Raman分光装置は信州大学のものを利用した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1に各処理前後のRaman分光分析結果を示す。Fig. 1(a)の未処理(Pristine)の試料には、炭素構造に起因するDバンドおよびGバンドが確認され、PSには、D**バンドも観測された。これはPSが他試料よりも非晶質炭素構造を多く有することに起因する。PSに熱
処理を施してあるLHT, HHTのものは構造欠陥に起

因するDバンドのピーク強度の低下が見られ、結晶性が高いことがわかる。これらに塩酸処理を施すとPSのみ、溶液の色が無色透明から黄色に変化し、金属触媒が構造から除去されていることがわかった。他の試料は無色透明のままであり、金属触媒が構造に残存していることがわかった。純粋な炭素構造を評価するために、PSに対して各処理を施した結果をFig. 1 (b)に示した。
Fig. 1 (b)は下から塩酸処理後、Ar熱処理後、Li-Naph撹拌後の結果であり、Li-Naph撹拌後には、D’バンドが確認された。またSEM像からも繊維軸方向の長さの低減が見られたため、D’バンドは短小化したCSCNTのエッジに起因していると考えられる。

Fig. 1 Raman分光分析結果@532nm
(a) Pristine, (b) 各処理後のPS

4.その他・特記事項(Others)
Li-Naph撹拌のみでは、CSCNTの効率的な短小化が達成できなかったため、アルカリ金属をCSCNT層間に化学的に挿入した後、Naph重合による剥離を目指す。
共同研究者等(Coauthors):
林 卓哉 教授、村松 寛之 助教、高 永一
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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