利用報告書
課題番号 :S-18-MS-1069
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :強相関分子結晶が示す特異な磁気相転移と構造に関する研究
Program Title (English) :Unique magnetic phase transition and crystal structure of highly-correlated molecular system
利用者名(日本語) :水津理恵
Username (English) :R. Suizu
所属名(日本語) :千葉大学グローバルプロミネント研究基幹
Affiliation (English) :Institute for Global Prominent Research, Chiba University
1.概要(Summary )
強相関ジチオレン錯体(NEt4)[MIII(dmtdap)2] (1a: M = Ni, 1b: M = Fe, 図1挿入図)は、室温でほぼ同じ結晶構造でありながら、その磁気的挙動は全く異なり、かつ図1に示すように特異的な転移を示す。そこで磁気的挙動と結晶構造の相関を明らかにするために、極低温での単結晶構造解析を行った。
2.実験(Experimental)
極微小結晶用単結晶X線回折装置 (Rigaku社製 HyPix-AFC (旧名CCD-3))
ヘリウムガス吹付け装置を用いてジチオレン錯体1aおよび1bの単結晶を80K以下に冷却し回折データを取得し、X線結晶構造解析を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
図2に30 Kにおける1aの結晶構造を示す。1aは結晶中において二量体化しており、b軸方向に積層していた。またac面内にvan der Waals半径の和よりも短いS···N距離が存在し、それを介して三次元的なネットワークを形成していた。温度を上げると、Ni原子の積層方向における異方性温度因子が他に比べて異常に大きくなることから(図3)、積層方向への熱振動が激しくなっていると考えられる。そこでディスオーダーを考慮した解析を行ったところ、2つの二量体パターンとして解くことが出来た。このことから、ニッケル錯体1aは温度を上げるにつれて熱振動が大きくなり、二量体の組み替えが起きていると考えられる。鉄錯体1bも同様に二量体の組み換えが起きていると考えられるが、1aに比べて金属間距離が若干長いことから、反強磁性相互作用が小さく、低温で反磁性にならず基底状態で有限の磁化を持ったと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
本研究は千葉大学リーディング研究育成プログラム「先導的ソフト分子の活性化と機能創製(ソフト分子活性化)」の助成を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 水津理恵,花本大智,星野勝義,坂本一之,阿波賀邦夫,第12回分子科学討論会2018福岡,平成30年9月12日.
6.関連特許(Patent)
なし。