利用報告書
課題番号 :S-18-NM-0070
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :植物細胞壁組成の分光学的評価
Program Title (English) :Spectroscopic evaluation of plant cell wall compositions
利用者名(日本語) :ナブチ, 梶田真也
Username (English) :Nabuqi, S. Kajita
所属名(日本語) :東京農工大学大学院生物システム応用科学府
Affiliation (English) :Graduate School of Bio-Applications and Systems Engineering, Tokyo University of Agricuture and Technology
1.概要(Summary)
植物細胞壁に蓄積するリグニンは芳香族のポリマーであり、植物の体勢維持や水分通導、ストレス応答に関わる重要な化学成分である。このポリマーは化学構造の異なるグアイアシル、シリンギル、p-ヒドロキシフェニルの3つの部分構造を持つことが知られている。この違いは、リグニンの重合に関与するモノマーの構造の差異に起因しており、植物種、組織、細胞ごとにリグニンの部分構造の存在比が異なっている。この違いの生物学的な意味は十分に解明されていないが、組織や細胞の生理的な機能の違いを生み出す要因の一つであると思われる。
本研究では、リグニン生合成に関与する遺伝子が欠損した複数のシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の変態を用いて、組織や細胞の違いによるリグニンの構造の差異をラマン分光分析により評価することを試みた。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
高速レーザーラマン顕微鏡
【実験方法】
土壌で一定期間生育させたシロイヌナズナの花茎を材料として、クライオスタットで薄切片を調製した。得られた薄切片をエタノールで洗浄し、スライドグラスに貼り付けたのち、ラマン顕微鏡を用いて束間繊維細胞と道管の細胞壁のラマンスペクトルを測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
測定の結果得られたスペクトルの一例をFig. 1に示す。Fig. 1Aは野生型個体、Fig. 1Bは特定の遺伝子が欠損した変異体の束間繊維細胞の細胞壁を測定した際に得られたスペクトルである。当初は十分な分解能でのスペクトルが観測できなかったが、試料をエタノールで洗浄したことで低分子の化合物に由来する蛍光が除去され、細胞壁成分に由来するシグナルを検出することが可能となった。変異体のシグナルから、代謝の変動に起因すると思われるケイ皮アルデヒド残基の蓄積が示唆された。
これ以外にも異なる遺伝子が欠損した変異体を多数分析したが、いずれの場合も得られたシグナルから特定の代謝変動を示唆する結果をえることができた。今後は、組織や細胞の違いによるリグニンの分子構造の差異をより詳細に解析することが可能になると思われる。
Figure 1. Raman spectra acquired from cell walls in interfascicular fiber (A) and vessel element (B). Different lines indicate the data from independent cells. Signals from polysaccharides and lignin are shown as blue and yellow, respectively.
4.その他・特記事項(Others)
装置使用法についてNIMS李潔氏、李香蘭氏の支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







