利用者インタビュー

―これまでジャヤデワン教授は、どういった研究に携わられてきたのでしょうか。

私はスリランカ出身で、1988(昭和63)年に留学生として来日しました。日本では最初、磁性流体についての研究に取り組み、ナノ粒子合成、磁性材料の物性を調べていました。2000(平成12)年からは、研究テーマを「ポリオール還元法を用いたナノ粒子合成」に絞り、以後、ナノスケールの金属系材料の開発を行っています。ナノ金属材料については、工学および医学応用を目指し、ポリオール還元法をベースとしたナノスケールの金属・合金・金属酸化物素材や、磁性・導電性ナノ金属粒子・ナノワイヤの合成に関する技術を開発しています。

―ナノスケールの金属材料の生成にテーマを絞っていますね。

現代は、原子や分子のスケールで自在に物質を制御する「ナノテクノロジー」が進歩したことにより、さまざまな機能を持った材料を作ることが可能になっています。ナノスケールの金属材料は今後に期待が持てるだろうと考え、特に還元しにくいと言われている金属材料に着目して研究を進めてきました。

―今回、銅ナノワイヤの生成に取り組んだのはなぜですか。

近年、タッチパネルなどで使われる透明電極の需要が増えています。現在使われている酸化インジウムスズは高価であり、その代替材料として銅ナノワイヤが注目を集めているからです。

―なるほど。銅ナノワイヤに置き換えるメリットとデメリットを教えてください。

価格が安いという点が大きなメリットでしょう。また、ワイヤを薄く細くできることで透明度が上がります。デメリットについては酸化による導電性の劣化が問題視されています。

―ジャヤデワン教授は、このデメリットをどのように克服しようと考えたのですか。

銅とニッケルの合金を銅ナノワイヤの表面に被膜することを考えました。ただ、その膜が厚すぎると銅の高い伝導率が生かされないことになります。そのため、数ナノメートルの薄さでコーティングすることを目指していますが、現状は数十ナノメートルと目標には達していません。

―被膜を薄くするにはどうしたらいいのでしょうか。

ワイヤの形成プロセスを解析すると、最初に銅のナノワイヤが生成され、その後にニッケルが析出していき、銅とニッケルが結びつきます。この段階で温度と時間を計算して反応を止めれば、銅とニッケルの合金が被膜した銅ナノワイヤが出来上がるわけです。現在は銀を添加することで薄くすることに成功していますが、別のプロセスでコントロールできないか模索しています。

―ナノテクノロジープラットフォームを利用していかがでしたか。

銅とニッケルで覆われた銅ナノワイヤの元素がどういった構成比率になっているのかを調べるため、北陸先端科学技術大学院大学の原子分解能電子顕微鏡を利用しました。限られた設備機器の中で研究している地方大学にとって、こういったシステムがあるのはありがたいことだと思います。

ポリオール/アルコール還元法の“見える化”

―ところで、この銅ナノワイヤの生成には、ポリオール/アルコール還元法という手法を使っているそうですね。

はい。2000(平成12)年からポリオール/アルコール還元法についての研究に取り組んでいます。これまでの研究で金属粒子の合成におけるポリオール/アルコール還元法の優位性は明らかだと思います。水溶液で金属粒子を生成しようとすると、酸化することが問題となります。特にナノスケールになると被表面積が高くなりますので、あっという間に酸化して材料としては使い物になりません。その点、多価アルコールの中で金属材料を生成するポリオール/アルコール還元法なら酸化を防ぐことができます。ただ、この手法を用いる研究者は多くないのが現状です。

―どうして利用されないのですか。

ポリオールがどのように反応して金属粒子を生成しているかという基礎研究が不足しており、作用機序が明らかになっていないからです。そこで、私たちの研究室では「銅のナノ粒子を作りたいときはどの試薬を使えばいいのか」といったさまざまなケースを想定し、それらを一つ一つ明らかにしていくことで“見える化”を進めています。ポリオール/アルコール還元法のプロセスが徐々に明らかになっており、材料によってはベンジルアルコールでワイヤ生成できるようになっています。

―今後の展望をお聞かせください。

これまで材料の開発では、効果や物性を決めるために膨大な実験を繰り返してきました。私が目指しているのは、材料の構造を自在にコントロールすることです。効果や物性を確実に設計できれば、研究スピードは格段に向上するでしょう。私の研究が材料設計の進歩の一翼を担えれば幸いです。

この研究に関するお問い合わせ:北陸先端科学技術大学院大学

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