利用者インタビュー

すべての開発の分析を担う

―東洋紡さんと言えば、以前は繊維部門が事業の中心だったと思います。現在はどのような事業を中心に展開しているのでしょうか。

工業用・包装用フィルムを中心に、強度と耐熱性に優れたエンジニアリング・プラスチックや機能性樹脂、フィルター材料などを展開しています。事業所、工場は国内に5カ所、関係会社を含めると、アメリカや東南アジアにも生産拠点があります。

―140年の歴史がある御社も変革が求められているわけですね。ところで、分析センターではどういった業務を行っているのですか。

当社のすべての開発に関する分析を一手に担っています。分析センターには研究員が約20人所属しています。また、会社の規模からすれば分析設備の充実度は高いと言えます。センターへの投資は、他社との競争に勝ち乗るために、自社の開発力を伸ばす必要性があると経営判断しているからです。また、製品の信頼性を高める上でも重要な役割を果たしていて、お客様の信用を勝ち取る上でも欠かせない存在です。

開発速度は10年前の2倍に

―なるほど。一見、地味に思える分析という業務ですが、実は大きな役目を担っているのですね。

新しい素材を開発するには、データの裏付けが必要です。いち早くデータをそろえることができれば開発のスピードが上がります。また、部署間の情報をつなぐ機能も果たします。営業部門からは、私たちにお客様からの不具合などの情報がもたらされ、製品のデータを分析します。その結果は開発部門にフィードバックし、新たな製品に生かされるわけです。

―分析する人がいなければ開発は進まないのですね。

そう思います。少なくとも開発効率は格段に上がると思います。入社後、私は分析センターに配属され、今年で10年目になります。NMR(核磁気共鳴装置)が担当です。依頼数や分析納期を考えると、年々、要求される開発速度が速くなっているように感じます。例えば、当社はアメリカにも拠点がありますから、アメリカからサンプルが送られてきて、サンプル到着翌日に分析結果を出すといったケースも増えました。

分析も開発部門の一員

―分析という業務には、どのようなやりがいがありますか。

分析センターとしては月に約300件、私個人としては月に約30件の分析依頼があります。全く同じ試料は無いと言えるので、毎日新鮮な気持ちです。そして、開発部門が持ち込んだ素材で、依頼者の狙った通りの傾向、数値が出ると、自分のことのようにうれしいです。また、分析した結果から、こういった添加剤を入れてみてはどうかとアドバイスすることもあります。そういった意味では、開発部門の一員という気持ちで取り組んでいます。

―先ほどNMRを担当しているとおっしゃっていました。入社時から担当しているこの機器の魅力はどんなところでしょうか。

NMRは、物質の化学構造が分かる分析手法として優れています。他社製品の樹脂が持ち込まれた時、最初に分析に使われるのは当社ではNMRが多いです。例えば、AとBとCで構成されている自社材、他社材があったとしても、AとBとCの比率の違いはもちろん、変性の有無、加えられている添加物やその量が異なる等、材料の処方が分かるので、その材料に対する他社の開発コンセプトまで読み取ることができるわけです。また、比率とともに当社の製品が決められた組成通りに生産されているかも分かるため、品質管理にも貢献しています。経験を積んでいくと、波形を見ただけでどんな素材か分かるものもあり、予想の精度が上がっていきます。

―分析を担当した中で、機能が向上したり、問題が解決したりした事例はありますか。

当社のメイン素材に、車などに使われるエンジニア・プラスチックがあります。ある顧客に納入したところ、製品成形時に異物が現れるというクレームが寄せられました。そこでNMRやその他の分析手法を用いて、異物の原因が添加剤の凝集物であることを特定しました。

緊急を要する案件にも対応

―ところで、ナノテクノロジープラットフォームのNMRを定期的に利用されていますね。

分析センターには3台のNMRがあります。固体NMRを1台、溶液NMRを2台保有しています。これまで、本プラットフォームにおいて、固体NMRと高性能な溶液NMRを利用しています。特に、名古屋大学さんには、保有装置の故障時、また、測定時間が確保できないときに、分析をお願いしています。機器が壊れると修理に2、3カ月はかかってしまいますので。以前、緊急を要する案件があって、名古屋大学さんには無理を言って、急遽、機器のスケジュールを押さえてもらいました。工場で生産した樹脂を、その足で大学に持ち込み、即日の分析をお願いしました。1日で何百万円のロスが生じるケースでしたので、とても助かりました。また、固体NMRについては、容器に試料をどのように詰めると回りやすいのかといった意見交換もできました。分析ノウハウはあまり公開されていないので、試料によって粉砕した方がいいのか、フィルム状のままがいいのかといったことを話す機会は少なく、非常に参考になりました。そして、何より料金が安いですね。民間に頼むことを考えると10分の1以下でしょう。料金も気軽に利用できるポイントです。

―これから取り組みたいことがあれば教えてください。

分析センターの処理能力が限界にきていることから、各生産拠点にNMRを設置できたらと思っています。その結果、開発スピードは格段に上がるでしょう。今後、NMRを扱える人を育てていく必要もあると感じています。また、どんなトラブルであっても、全く情報が無い材料であっても、私に聞けば何か分かると思ってもらえる存在になりたいですね。私が担当した依頼の中から、素晴らしい材料が生まれてくれれば幸いです。

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