利用報告書

連続回転炉を用いた水素還元による酸素欠損型金属酸化物の製造

課題番号 :S-20-KU-0026
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :連続回転炉を用いた水素還元による酸素欠損型金属酸化物の製造
Program Title (English) :Production of oxygen deficient metal oxide by continuous screw reactor
利用者名(日本語) :熊井絵理,WANG YIRANG,田中学,渡辺隆行
Username (English) :E. Kumai, Y. Wang, M. Tanaka, T. Watanabe
所属名(日本語) :九州大学 工学研究院 化学工学部門
Affiliation (English) :Department of Chemical Engineering, Kyushu University

1.概要(Summary )
 酸素欠損型金属酸化物は高機能材料として注目されている。それらの製造方法として、固定層や流動層による回分式のプロセスが検討されてきた。本研究では、連続回転炉を用いてWO3を水素還元することで酸素欠損型WO3の連続反応による製造を試み、酸素欠損度の制御を行うための操作条件について検討した。

2.実験(Experimental)
 本研究で作製した連続回転炉の概略図をFig. 1に示す。試料をホッパーからスクリューの回転によって反応管に連続的に供給する。反応管は電気炉で所定の温度まで加熱し、対向流として導入されたH2により、高温部で還元を進行させる。
 原料は平均粒径20 mのWO3を用いた。還元時間、還元温度、水素濃度を変化し、それぞれの操作条件の還元反応への影響を検討した。還元後の試料はXPS(島津製作所 AXIS-ULTRA)を用いた表面化学結合状態の分析により酸素欠損状態を評価した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 原料および水素濃度を3vol%とし,還元温度1073Kで10分還元した場合の生成物のO1sスペクトルをFig.2に示す。原料では829.8 eVに1つのピークが存在するが、還元後の試料には原料と同様のピークに加えて531.5 eVに新たなピークが確認できる。531.5 eV付近のピークは酸素欠損状態の金属酸化物に一般的にみられるピークであり、XPS分析結果より酸素欠損型WO3の生成が示唆される。以上より、連続回転炉を用いた水素還元による酸素欠損型金属酸化物の製造をおこない、各操作条件の還元反応への影響を解明した。

Fig. 1 Schematic diagram of continuous screw reactor.

Fig. 2 O 1s XPS spectra of raw and reduced WO3.

4.その他・特記事項(Others)
本研究はJSTイノベーションハブ構築支援事業に基づくJAXA宇宙探査イノベーションハブとの共同研究「難還元性酸化物の水素還元システムによる機能性材料の製造」について実施したものである。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 熊井絵理,田中学,渡辺隆行,藤田勇仁,星野健,細田聡史,金森洋史,化学工学会第51回秋季大会,令和2年9月24日
(2) 熊井絵理,田中学,渡辺隆行,星野健,細田聡史,金森洋史,化学工学会九州支部オンライン学生発表会, 令和2年12月5日
6.関連特許(Patent)
特許出願中(特願2020-150352)令和2年9月8日

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