利用報告書
課題番号 :S-16-CT-0009
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ナノスーツ法と電界放出型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いた昆虫SEM画像の高度 化に関する研究
Program Title (English) :Study on advance of SEM images using Nano-suits method and field emission
scanning electric microscope (FE-SEM).
利用者名(日本語) :野村周平
Username (English) :Shûhei Nomura
所属名(日本語) :国立科学博物館
Affiliation (English) :National Museum of Nature and Science, Tokyo, Japan
1.概要(Summary )
申請者らは生物の微細構造の画像データを多数蓄積し、相互に比較対照することによって工学的「気づき」を誘発し、工学技術の新たな展開を図る取り組みを行っている。その中で、これまでSEM観察、写真撮影が困難であった、水分を多く含む生物試料や電子線を当てた場合に軟弱な試料について、「ナノスーツ法」および「FE-SEM」を用いて、生体や軟弱表面の高倍率でのSEM観察を行い、SEM画像データの質的な高度化を図ることとした。
2.実験(Experimental)
平成27年度中に千歳科学技術大学を1回訪問し、以下に示す4種のトンボ(トンボ目カワトンボ科)の8サンプルについて、SEM観察、写真撮影を行った。
アオハダトンボ♂ 翅および腹部末端
ハグロトンボ♂ 同上
ニホンカワトンボ橙色型♂ 同上
アサヒナカワトンボ褐色型♂ 同上
使用機器はJEOL JSM-7800F (FE-SEM)を用い、平井博士および平井研究室の学生によるサポートを受けながら、必要部分を切り出して試料台に貼り付け、観察を行った。すべてのサンプルについて、プラチナによる蒸着を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
今年度中には上記8サンプルについて、FE-SEMを用いた写真撮影を行い、353枚の画像データを取得した。カワトンボ類4種について、1)翅膜面のモスアイ構造と、2)尾端腹面の分泌物に覆われた表面を観察したところ、アオハダトンボとハグロトンボとの間では、1)について突起の形状や規則性に違いが見られたのに対し、2)については明確な違いは認められなかった。
ニホンカワトンボ翅膜面の不透明斑には分泌物の蓄積が認められた。アサヒナカワトンボには不透明斑はなく、分泌物の蓄積は認められなかった。
A, C:FE-SEMによるトンボ翅膜面のモスアイ構造;B, D:FE-SEMによるトンボ腹部末端の分泌物表面.A:アオハダトンボ♂(トンボ目カワトンボ科:50,000倍);B:同左(10,000倍);C:ハグロトンボ♂(トンボ目カワトンボ科:40,000倍);D:同左(10,000倍).
4.その他・特記事項(Others)
千歳科学技術大学の下村政嗣、平井悠司、オラフ=カートハウスの3博士には多くの点で、本研究へのご助力を賜った。特に平井博士および平井研究室の学生諸君には、機器の操作についてご助力をいただき、厚く感謝の意を表す。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 野村周平,OHM, 103 (9) (2016) p. 70.
(2) 野村周平,下村政嗣監修「インスツルメンテ―ションの視点からみたバイオミメティクス」シーエムシー・リサーチ,東京,(2016) pp. 29-39.
(3) S. Nomura, T. Ogawa, M. Haseyama and K. Kozaki, 5th Nagoya Biomimetics International Symposium (NaBIS), Poster. 20-21th Oct. 2016.
(4) 野村周平,日本化学会春季年会ATP 2D5-12,2017年3月17日.
6.関連特許(Patent) 該当なし







