利用報告書
課題番号 :S-18-NM-0015
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :プロテオミクス解析によるMycobacterium avium complex症、および多剤耐性結核症感染組織における特異的分子マーカーと微量元素の探索
Program Title (English) :Investigation of novel molecular markers in mycobacterial granulomatous lesions of Mycobacterium avium complex pulmonary disease and multi-drug resistant tuberculosis by proteomics analysis
利用者名(日本語) :瀬戸真太郎
Username (English) :Shintaro Seto
所属名(日本語) :公益財団法人結核予防会結核研究所
Affiliation (English) :The Research Institute of Tuberculosis, Japan Anti-Tuberculosis Association
1.概要(Summary )
本研究の目的は、多剤耐性結核症の手術標本から肉芽腫のタンパク質を抽出して、プロテオミクス解析によって、結核感染組織で特異的に発現しているタンパク質、遺伝子を同定することである。また、肺Mycobacterium avium complex(MAC)症の感染組織と比較することによって、それぞれの病変組織で特異的に発現する分子マーカーを同定することができる。本研究によって、未だ明らかになっていない多剤耐性結核症および肺MAC症の病変形成にかかわる宿主因子の発見が期待できる。
2.実験(Experimental)
(1) 多剤耐性結核菌症および肺MAC症のFFPE組織標本からLMD7000を用いて、レーザーマイクロダイセクション法で肉芽腫組織を分画する。HE染色を行った病理評価用スライドを用いて、肉芽腫の同定を行う。特に、中心部の乾酪壊死層と周辺の線維化した細胞層とで区別して分画する。
(2) それぞれの画分に含まれるタンパク質を抽出する。抽出したタンパク質のトリプシン処理を行った後に、質量分析計によって網羅的タンパク質同定を行う。タンパク質発現量解析はペプチドプリカーサーイオン強度を比較することによる非標識定量法によって行う。
(3) 結核菌感染によって乾酪壊死を形成するマウスに結核菌を感染させて、感染肺のFFPEを作成して、上記方法と同様に解析した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
結核菌感染によってヒトと同様に乾酪壊死を伴う肉芽腫を形成するマウスに結核菌を感染させて、結核モデルマウスを作成した。感染肺のFFPE標本からLMDで分画した乾酪壊死と細胞層から、それぞれ2000以上のタンパク質を同定することができた。それぞれの画分で特異的に発現しているタンパク質の遺伝子オントロジー(GO)解析の結果、乾酪壊死では急性期反応、自然免疫反応、血液凝固などに関するタンパク質を同定した。細胞層には抗原提示、エンドサイトーシスに関与するタンパク質が蓄積していることが明らかになった。ヒト多剤耐性結核症の乾酪壊死に蓄積するタンパク質を比較した結果、ヒトではより線維化が進行していることが明らかになった。本研究成果は、ヒト結核と同様な結核肉芽腫を形成するマウスモデルを用いた、多剤耐性結核や潜在性結核感染症の免疫治療法や宿主タンパク質を標的とした化学療法の開発の礎となる。
4.その他・特記事項(Others)
NIMS李香蘭博士に装置利用について支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし