利用報告書

マイクロ波を用いた炭素材料の評価 
尾西彩、兼平真悟(マイクロ波化学株式会社)

課題番号 :S-19-OS-0048 
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :マイクロ波を用いた炭素材料の評価 
Program Title (English) :Evaluation of carbon materials using microwave
利用者名(日本語) :尾西彩、兼平真悟
Username (English) :A. Onishi、S. kanehira
所属名(日本語) :マイクロ波化学株式会社
Affiliation (English) :Microwave chemistry Co., Ltd.

1.概要(Summary )
グラファイトを限界まで剥離した後に残るものは、グラファイトを構成する単一2次元層であり、グラフェンと呼ばれる。グラフェンは、シリコンのような半導体とは全く異なる電子構造をとり、室温で通常の半導体材料の10〜100倍という非常に高い電子伝導度を示すなど、材料としてもユニークな特性を示す。
グラフェンを合成するには、炭素材料の剥離を繰り返す剥離法、SiCなど炭素を含む化合物を熱分解する方法など、様々な方法が提案されている。剥離法は、グラフェンの大量生産には適した方法であり、弊社で開発しているマイクロ波プロセスにも応用可能である。しかし、剥離法は格子欠陥が入りやすく、粒子が微細化しやすい。また、グラフェンは現実的には10層程度でも十分グラフェンに近い特性を発揮するため、剥離法では数層からなるグラフェンが主として合成されている。これは、一般的にFew-Layered Graphen, FLGと呼ばれている。
本研究では、剥離法のプロセスとしてマイクロ波を利用することで、グラファイトの薄層化の検討を行った。しかし、加熱の過程で酸化グラフェンになっている可能性があるためレーザーラマン顕微鏡で評価を行った。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S19レーザーラマン顕微鏡
【実験方法】
剥離した積層グラフェン粉体をレーザーラマン顕微鏡にて物性評価を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
図1に積層グラフェンのラマンスペクトラムを示す。
酸化グラフェンとは異なったスペクトルを示しているため、酸化グラフェンでは無いことがわかった。グラフェンに特有のG, Dバンドのピークが認められた。この強度比から予想される層数は数層以上であった。

4.その他・特記事項(Others)
【参考文献】
・S. Stankovich et al., Nature, 2006, 442, 282.
・S. Park et al., Nature Nanotechnology, 2009, 4, 217.
・F. D’Souza et al., Handbook of Carbon Nano Materials Vol.4 (World Scientific Publishing. 2012)
・Y. Tsukahara et al., Chem. Lett., 2006, 35, 1396.

【謝辞】
大阪大学ナノテクノロジー設備供用拠点に感謝いたします。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。

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