利用報告書

ラジカル反応による窒素原子を有する環状化合物の合成
野元昭宏1), 森本積2), 小川昭弥1)
1) 大阪府立大学大学院工学研究科, 2) 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科

課題番号 :S-19-NR-0009
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :ラジカル反応による窒素原子を有する環状化合物の合成
Program Title (English) :Synthesis of N-Cyclic Compounds via Radical Reaction
利用者名(日本語) :野元昭宏1), 森本積2), 小川昭弥1)
Username (English) :A. Nomoto1), T. Morimoto 2), A. Ogawa1)
所属名(日本語) :1) 大阪府立大学大学院工学研究科, 2) 奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering, Osaka Prefecture University, 2) Graduate School of Materials Science, Nara Institute of Science and Technology

1.概要(Summary )
窒素原子を有する化合物群は、現代社会において様々な形で利用されており、中でも窒素原子を含有する環状化合物は薬剤、農薬、色素など、機能性分子群では必須の骨格である。これらの合成法は様々な角度から検討されており、多くの化学合成手法が確立されている。しかしながら近年の環境に対する高い注目は、従来手法の継続的適用を困難なものにさせていることも問題となっている。
我々は酸化反応を中心に環境低負荷な酸化反応を開発しているが、今回、本手法のさらなる展開として、奈良先端大ナノテクノロジープラットフォームでの高分解能質量分析装置による化合物決定によって、ラジカル反応を経由した環境低負荷な手法による窒素原子を有する環状化合物の合成が可能であることを見出した。
2.実験(Experimental)
二口フラスコに室温で、ベンジルアミン誘導体(1, 4.5 mmol)、1,2-ジアミノベンゼン誘導体(4, 3.0 mmol)、4,6-ジヒドロキシサリチル酸(3)、および蒸留したトルエン(1.0 mL)を加え、次に反応容器にO2バルーンを接続することで、混合物をO2雰囲気とし、24時間加熱撹拌した。

得られた混合物を減圧下で濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:1.0 v/v% Et3N)で精製し、生成物(5)を得た。
3.結果と考察(Results and Discussion)
反応温度、触媒量、溶媒を検討した(下表)。生成物は奈良先端大ナノテクノロジープラットフォームでの高分解能質量分析装置による化合物決定によって行った。その結果、本反応は、触媒3が存在しない場合、第一段階目のカップリング反応は進行せず、低温、短時間では収率が低下した。最適条件において、目的の5を、NMR収率94%(単離83%)で得ることに成功した。
entry solvent cat. (mol%) temp. (ºC) yield (%)
1 none 10 50 15
2 none 10 70 75
3 none 5 70 66
4 toluene 10 70 94 (83)
5 toluene none 70 trace
4.その他・特記事項(Others)
本研究は奈良先端科学技術大学院大学物質創成科学研究科の垣内喜代三教授、森本積准教授、西川嘉子技術職員、片尾昇平技術職員の御協力により推進されました。深く御礼申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) A. NOMOTO, C.-p. Dong, M. UESHIMA, A. OGAWA, The 4th International Symposium on Process Chemistry, 2019年7月26日.
6.関連特許(Patent)
なし。

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