利用報告書

医薬品用新規味覚センサの開発
野田 純平1), 田原 祐助2), 矢田部 塁3), 都甲 潔2、3)
1) 九州大学システム情報科学府, 2) 九州大学システム情報科学研究院, 3) 九州大学味覚嗅覚センサ研究開発センター

課題番号 :S-14-KU-0003
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :医薬品用新規味覚センサの開発
Program Title (English) :Development of a taste sensor for medicines
利用者名(日本語) :野田 純平1), 田原 祐助2), 矢田部 塁3), 都甲 潔2、3)
Username (English) :J.Noda1), Y.Tahara2),R.Yatabe3),K.Toko2、3)
所属名(日本語) :1) 九州大学システム情報科学府, 2) 九州大学システム情報科学研究院, 3) 九州大学味覚嗅覚センサ研究開発センター
Affiliation (English) :1) Graduate School of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University, 2) Faculty of Information Science and Electrical Engineering, Kyushu University, 3) Research and Development Center for Taste and Odor Sensing, Kyushu University

1.概要(Summary )
味を測定可能である味覚センサでは脂質高分子膜を用いて味の情報を電気信号に変換している。 この脂質高分子膜は高分子・脂質・可塑剤で構成される。 これらの材料を混合し作製した膜は水溶液に浸漬すると味物質に対して応答特性が変化することが分かっている。 この浸漬処理前後で膜表面がどのように変化しているかをX線光電子分光法(XPS)にて分析した。
その結果, 浸漬前では窒素原子を示すピークは見られないが、浸漬後には確認された。 またそのケミカルシフトから脂質分子由来のピークであることが示唆された。 これらの結果から、脂質高分子膜を水溶液に浸漬することで膜表面に脂質分子が濃縮されることが示唆された。
2.実験(Experimental)
脂質(tetradodecylammonium bromide : TDAB)および可塑剤(2-nitrophenyl octyl ether : NPOE)の量を変化させた脂質高分子膜サンプルを複数作製し、 それぞれグルタミン酸ナトリウム(MSG)水溶液への浸漬処理前後の膜について高性能X線光電子分光測定装置(ESCA5800)を用いて分析した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
その測定結果の内, N 1sピークを比較した結果を図1に示す。まずグラフにて赤系統のグラフはすべて浸漬処理前で青系統のグラフは浸漬処理後となっている。 浸漬処理前のサンプルではN 1sのピークが確認されないが浸漬処理後のサンプルではすべてN 1sピークが確認される。またピークは400、 402eVの二つ確認できる。脂質高分子膜(高分子・NPOE・TDAB)およびMSG水溶液の内、 窒素原子を持つものはNPOE, TDAB, MSGである。TDAB・NPOEが含まれないサンプルに関しても浸漬処理後に400eVのピークのみが確認できるので、400eVのピークはMSG由来のピークであることがわかる。
次にTDABの量を増やしてゆくと402eVのピークが強くなることから402eVのピークはTDAB由来のピークであることがわかる。これらのことから浸漬処理を行うことでMSG水溶液のMSG分子が表面に吸着するだけでなく、 膜中のTDAB分子が表面に自己組織化によって集まってくることが示唆される。

4.その他・特記事項(Others)
本実験は, 独立行政法人日本学術振興会・科学研究費助成事業・若手研究(B)(No.26820129)の支援により行われました。 ここに感謝申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Yatabe, R.; Noda, J.; Tahara, Y.; Naito, Y.; Ikezaki, H.; Toko, K. Analysis of a lipid/polymer membrane for bitterness sensing with a preconditioning process. Sensors 2015, 15, 22439–22450.
6.関連特許(Patent)
なし

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