利用報告書
課題番号 ：S-19-OS-0019
利用形態 ：機器利用
利用課題名（日本語） ：半導体量子ナノ構造における量子輸送現象の研究
Program Title (English) ：Study of quantum transport phenomena in semiconductor nanostructures
利用者名（日本語） ：木山治樹、塩谷広樹、中川智裕、深井利央、藤田高史、福田源希、松本雄太、木戸陽一、井手西広樹、ガブリエル グラック マイア、高浚い、柳谷諭、アルド タラシオ、林望
Username (English) ：H. Kiyama, H. Shioya, T. Nakagawa, R. Fukai, T. Fujita, G. Fukuda, Y. Matsumoto, Y. Kido, H. Idenishi, G.G.Maia, J. Gao, S. Yanagidani, A. Tarascio, N. Hayashi
所属名（日本語） ：大阪大学産業科学研究所
Affiliation (English) ：The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University
１．概要（Summary ）
我々は半導体ナノ構造における量子輸送現象を研究対象としています。本報告では原子層スケール厚みの層状物質半導体として知られる遷移金属ダイカルコゲナイドの一種であるWSe2について行った研究について報告します。
層状物質の輸送特性は、化学結合種の違いから面内と面間とで異なる事が知られています。特にWSe2の面内熱伝導率は面間のものに比べて30倍も大きいと報告されています。我々は2層WSe2を用い、この熱伝導率異方性を活用した層選択酸化の手法を独自開発しました。また、層選択酸化の結果生成されたWSe2/WOxにおけるフォトルミネッセンス(PL)から光酸化を示唆する結果が観測されました。これらの成果は、低次元における熱伝導や酸化反応を理解する手掛かりを与えるものと考えられます。
２．実験（Experimental）
（使用機器）S19 レーザーラマン顕微鏡
2層WSe2が照射されたエネルギーを吸収した結果発熱するという、レーザー加熱の方法を用い酸化しました。照射レーザー設定は、上層のみ選択的に酸化させる為に強度を落としました。これにより、照射エネルギーが面間よりも面内を伝搬し易くさせ、上層と下層とで酸化程度に違いを生じさせる意図があります。
３．結果と考察（Results and Discussion）
試行の結果、上層のみ酸化されたWSe2/WOxの構造が得られました(RamanとPLで確認)。WSe2/WOxの構造からのPL peak強度は、単層に比べ1桁小さいものでした。これはレーザー励起された電子が再結合せず隣接したWOxへ移動する事が原因と解釈可能で、それは光酸化のメカニズムと同様のものです。
４．その他・特記事項（Others）
本報告に関わる研究推進の為に、以下に挙げる競争的資金の援助を受けました。ここに一覧を示し、謝意を表します。
Grants-in-Aid for Early-Career Scientists (No. 18K14080)、“Nano Spin Conversion Science” (No. 26103004)、Scientific Research S (No. 17H06120)、the CREST Japan Science and Technology Agency (JST) (JPMJCR15N2)、the Dynamic Alliance for Open Innovation Bridging Human, Environment and Materials from MEXT、Murata Foundation.
５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
(1) H. Shioya, K, Tsukagoshi, K, Ueno and A. Oiwa,”Selective oxidation of the surface layer of bilayer WSe2 by laser heating” Japanese Journal of Applied Physics [RAPID COMMUNICATION], Vol.58（2019）p.p.120903.
(2) 塩谷広樹、塚越一仁、上野啓司、大岩顕、「2層WSe2の異方的酸化」 日本物理学会第75回年次大会, 令和2年3月16日
６．関連特許（Patent）
「なし。」
