利用報告書

塩基性有機ケイ素デンドリマー触媒の合成
釘田 強志
帝京科学大学生命環境学部

課題番号 :S-18-NM-0050
利用形態 :装置利用
利用課題名(日本語) :塩基性有機ケイ素デンドリマー触媒の合成
Program Title (English) :Synthesis of nano-sized organosilane Dendrimer
利用者名(日本語) :釘田 強志
Username (English) :Tsuyoshi Kugita
所属名(日本語) :帝京科学大学生命環境学部
Affiliation (English) :Department of Natural & Environmental Science, Teikyo Univ. of Sci. & Tech.

1. 概要(Summary )
デンドリマーは骨格が樹木状に伸びた,球形の構造を有しており,同じ合成プロセスを繰り返し,世代を重ねることによって,その球径を増加させることができる。よって,ある程度以上の大きさを有するデンドリマーは,限界ろ過等で分離することが可能である。
本研究では,種々の溶媒に可溶な有機ケイ素デンドリマーを合成し,その末端に塩基性基を導入することで,触媒活性を発現させることを試みた。
また、得られた塩基性有機ケイ素デンドリマーの触媒活性をKnoevenagel反応で評価した。

2.実験(Experimental)
一例として、第一世代有機ケイ素デンドリマー(1GVi)の合成について示す。
テトラビニルシラン6 mmolとトリクロロシラン36 mmolをTHFに溶解し、カルステッド触媒存在下50 ℃、18時間ヒドロシリル化を行い、1GClを得た。次にこれにTHF中、臭化ビニル72 mmolとマグネシウム72 mmolから合成したビニルマグネシウムブロミドを加え、50℃で18時間撹拌した。加水分解後、エーテル抽出し油状の生成物を得た。これを、0.6%酢酸エチルのヘキサン溶液を展開剤とするカラムクロマトグラフィーで精製し、1GViを得た。同様な反応を繰り返し,で2GViならびに3GViの合成も行った。
次に合成した有機ケイ素デンドリマーへのアミノ基の導入を試みた(Scheme 2)。1GVi 0.8 mmolにクロロジメチルシラン14 mmolをTHF溶媒中カルステッド触媒存在下、60 ℃で3時間撹拌し、デンドリマー末端に-Si(Me)2H基を有する1GSiClを得た。これを、エーテル中で水素化リチウムアルミニウムと反応させ、カラムクロマトグラフィーで精製し1GSiHを得た。この1GSiH0.38 mmolを2-プロパノールに溶解し、カルステッド触媒存在下、アリルアミン0.84 mmolとのヒドロシリル化を、150℃で2時間行い,末端に12個のアミノ基を有する有機ケイ素デンドリマー,1GNH2を得た。さらに,合成した 1GViを用い同様な反応を行い,2G-NH2も合成した
合成物の確認には,1H、13CNMRおよびIRを用いた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
生成物の定性には核磁気共鳴装置を用いた。
1GViのスペクトルには、6 ppm付近にビニル基ならびに、0.5 ppm付近に内部メチレン基の,それぞれ特徴的なピークが観測できる。1GViと2GViおよび3GViの単離収率は、それぞれ60%、58%、13%であった。次に、1GSiHのスペクトルでは、ビニル基のピークが消滅し、0 ppmならびに4 ppm付近にそれぞれSi-CH3の二重線およびSi-Hの7重線のピークが現れたことより、ヒドロシリル化が進行したことが解る。最後に,これとアリルアミンとのヒドロシリル化反応によって、Si-Hのピークが減少して、新たに1.3ppm付近にアミノ由来のピーク、さらに0.4、1.4、2.6ppm付近に内部水素のピークがそれぞれ観測でき、1GNH2の合成を確認できた。
合成した塩基性有機ケイ素デンドリマーの触媒活性を、各種Knoevenagelを用いて検討した。

4.その他・特記事項(Others)
装置使用についてNIMS李潔氏の支援を受けた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 恋水 力生,釘田 強志,第122回触媒討論会,函館,2018年9月28日
6.関連特許(Patent)
なし

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