利用報告書

環状骨格内に存在するヘテロ金属中心間のスピンカップリング挙動の追跡
菅沼瑛里1), 三宅亮介1), 2)
1) お茶の水女子大学理学部化学科, 2) お茶の水女子大学基幹研究院

課題番号 :S-19-MS-0030
利用形態 :ナノプラット協力研究
利用課題名(日本語) :環状骨格内に存在するヘテロ金属中心間のスピンカップリング挙動の追跡
Program Title (English) :Monitoring the spin coupling behavior at heterometallic cyclic metal array
利用者名(日本語) :菅沼瑛里1), 三宅亮介1), 2)
Username (English) :E. Suganuma1), R. Miyake1),2)
所属名(日本語) :1) お茶の水女子大学理学部化学科, 2) お茶の水女子大学基幹研究院
Affiliation (English) :1) Department of Chemistry, Ochanomizu University, 2) Research Core Center, Ochanomizu University.

1.概要(Summary )
最近、申請者らは、金属配位型の柔軟なトリペプチド1から、6配位と4配位の2種類の金属中心を持つ環状錯体([(1-3H+)4Ni8]4+)が形成できることを明らかにした(Fig 1, JACS, 2019, 141, 8675-8679)。また、6配位と4配位の金属中心間はアミド結合を介して、電子的に相関していた。金属イオンは、その種類により好む配位数が異なるため、これらの2種類の金属配位サイトは、二つの異種金属イオン間の相互作用を制御する場としての利用が期待できる。そこで、本協力研究では、Ni(II)とCu(II)の2種類の金属イオンを導入した環状錯体を合成し、その物性評価を行った。

Fig. 1本研究のベースとなったトリペプチドNi(II)環状錯体:本研究では、4配位中心のみCu(II)に置き換えた。

2.実験(Experimental)
合成したNi(II)-Cu(II)錯体の微結晶サンプルを用いてESRおよびSQUIDの測定を行った。ESRは、Bruker ESR E500を用いて、4 Kから室温まで測定した。また、SQUIDは、MPMS-7を用いて測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ESR測定から、g値が2.1であることがわかった。また、100 K以上では、スペクトルがブロードニングし、明確なピークが観測できなかった。SQUID測定における2 KでのM-H曲線は、環状骨格内のすべてのNi(II)とCu(II)の間に効率的な反強磁性相互作用が働いた状態でシミュレートした曲線と良い一致を示した。このことから、環状に並んだNi(II)とCu(II)の間には、アミド置換基を通じた効率的な相互作用が存在することがわかった。一方、T-T曲線は、シンプルなモデルでは、全ての温度範囲の実測値を再現することができなかった。様々な要因が考えられるが、柔軟なペプチド骨格を鋳型に用いた金属イオン配列であるため、温度変化によるわずかな配位環境の影響が現れている可能性が考えられた(論文作成中)。

4.その他・特記事項(Others)
本研究は、草本哲郎准教授との協力研究であり、木村舜さんにも測定でお世話になりました。また、Ni(II), Cu(II)の配位箇所の決定のためのXAFS測定を、東京大学理学部スペクトル化学センター准教授の岡林潤先生にお世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) ○菅沼瑛里・木村舜・草本哲郎・岡林潤・三宅亮介, 日本化学会第100回春季年会, 異種金属イオン配列を持つトリペプチド環状錯体の合成とその物性, 令和2年3月5日(中止のため、発表成立日に当たる要旨発行日)
6.関連特許(Patent)
なし

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