利用報告書
課題番号 :S-18-MS-1081
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :高分子膜中のアゾベンゼン含有錯体への偏光・光渦UV照射による波長選択的
分子配向誘導
Program Title (English) :Wavelength dependent inducing molecular orientation of hybrid films
Azo-metal complexes by polarized light or optical vortex
利用者名(日本語) : 八木汐海1), , 副島達雄1), 山﨑柊1), 吉田聖人1), 秋津貴城1)
Username (English) : S. Yagi1), T. Soejima1), S. Yamazaki1), M. Yoshida1), T. Akitsu1)
所属名(日本語) :1) 東京理科大学理学部(理学研究科)
Affiliation (English) :1) Faculty of Science、Tokyo University of Science
1.概要(Summary )
UVSOR BL-1Uを用いて、アゾベンゼン部位を分子構造に含む金属錯体を分散したPMMAキャストフィルム複合材料に円偏光や軌道角運動量をもつ光渦を照射した後の諸変化を、CDスペクトルを用いて調査した。
2.実験(Experimental)
アゾベンゼンのオルト位に置換基を導入することでシス体の熱安定性が高くなることが知られており、光異性化波長シフトや光配向制御が期待される。そこで、置換基の有無による比較を行うため、アゾ部位に置換基を導入した錯体を合成し、候補となる亜鉛(II)錯体を選んだ。異なる条件でそのPMMAキャストフィルム膜に光渦を照射し、日本分光円二色性分散 JASCO J-720WIを用いて、照射前後のCDスペクトルを試料をいくつかの角度や表裏を回転させて測定することで、光渦が及ぼすPVAの機械的性質への影響を除外し、光学的性質が抽出できるPVAキャストフィルムの選定を試みた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
実験室系で直線偏光紫外光の照射により光学異方性が発現した。直線偏光紫外光による配向は可視光によって配向秩序のない状態に可逆的に戻すことができることが分かった。
さらに円偏光照射前後にCDスペクトルの測定を行ったところ、照射後に新たなキラリティが発現することを見出した。またこれは照射する円偏光の利き手によって逆のキラリティになることを発見し、円偏光によるキラル分子秩序(らせん分子配向)の形成が示唆された。キラル錯体に起因しないCDが現れた。これらのことから、PMMA-金属錯体複合膜における光の電場ベクトルに対応した分子配向が示唆された。
加えて、分子研UVSORを利用した放射光による実験も行った。UVSORでは、放射光光源で紫外領域の光渦を作ることができる。この珍しい軌道角運動量を持つ光渦とスピン角運動量を持つ円偏光で形成される配向秩序を比較することを期待した。ここではUVSORで放射光照射とCDスペクトルを測定した結果から、放射光と実験室系光源の比較や考察を行った。
Fig. 1. Polarizer angle dependence of CD spectra of PazZn under the condition 11 after 205 min.
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) H. Nakatori, S. Yagi, T. Haraguchi, T. Akitsu,M. Katoh, M. Fujimoto, M. Fujiki UVSORシンポジウム2018, 平成30年11月10日
(2) S. Yamazaki, T. Haraguchi, T. Akitsu, M. Fujiki,スーパーコンピュータワークショップ2018, 平成31年1月16日
6.関連特許(Patent)
なし