山田:酸化ガリウム膜の作製や結晶成長について研究していました。これらはパワーデバイスなどに応用が期待されている材料です。これまでも学生と一緒に成膜実験を繰り返してきました。研究室には成膜装置としてCVD装置(化学蒸着 chemical vapor deposition)があるのですが、この装置はチャンバー内を真空にしなければならず、大変時間がかかること難点でした。1つのサンプルを作成するのに時間がかかり、高専は学生の実験時間(時期)も限られるため、なかなか研究を進めることができなかったのです。
山田:研究テーマとしても「高専らしさ」を考える事も重要です。大学と同じように最先端の装置・設備が必要なテーマ設定は見合いませんし、学生への教育を含めたテーマ設定が重要となります。今回、JAISTに支援いただいた装置開発はそういう面を考えてもとてもよい研究テーマとなりました。
山田:共同研究相手の金沢大の先生から、JAISTの仲林さんがミストCVD法に関する研究をされていることを知ったのがきっかけです。現在も共同研究を行っています。
仲林:JAISTでは技術職員が自ら設定した技術の研鑽業務が認められており、現在の私のテーマはミストCVD法を用いた機能性薄膜の研究を行っています。数年前、この手法の先駆者の先生方が在籍されている大学へ訪問させていただき、その成膜手法の特徴に魅了され、JAISTへ戻ってから自作の装置を開発しました。今回はその経験を活かし、石川高専様からのご依頼に対応しました。
山田:ミストCVD装置は普通のCVD装置と異なり、大気圧での製膜が可能です。すなわち、成膜時間が短かく、装置が簡便で、また装置開発としての要素もあり、高専での研究テーマとしてぴったりだと思いました。
山田:昨年度の応用物理学会では、研究室の学生のポスターに多くの方が質問に来てくれるなど、注目度の高さを感じました。
仲林:現在、次世代成膜手法の一つとして注目されているミストCVD法の研究成果は発表が増えてきています。
山田:JAISTでは、装置開発だけではなく、XRDとTEM観察についても支援していただきました。特にTEM観察はサンプル作製でも時間をかけて試行錯誤していただき、その成果だけで学会発表されたほどです。TEMのような大型装置は高専では所有していませんので、大変助かりました。
また、JAISTの技術職員の方は幅広い知識をお持ちの方が在籍されているので、今回の制度利用によって、多くの知見が得られたように思います。
山田:近隣大学にも確かに機器共用システムはありますが、教員付きの装置を利用するのは敷居が高くなります。JAISTは技術職員が専属でついているので、大変相談しやすい環境でした。今後も研究に関して深く技術職員の皆さんと関わっていきたいと思います。