■ 石川県立大学(森 正之)
■ 支援機関 北陸先端科学技術大学院大学
研究に利用する有用たんぱく質を作るには、遺伝子を組み替えた大腸菌を使うのが一般的である。この方法が利用できない場合の代替策のひとつとして、本課題では植物細胞を使った技術を開発した。植物細胞で合成したたんぱく質が設計通りの大きさや形を持っているかどうかを、プラットフォームの利用設備である質量分析や NMR を用いて構造決定した。また、この技術を駆使した新たなたんぱく質の研究にも取り組んでおり、植物の種子において粒の大きさがそろう仕組みの一端を明らかにした。
■ (独)農研機構畜産草地研究所(本山三知代)
■ 支援機関 物質・材料研究機構
脂肪の結晶状態は脂肪を含む食品の物性に大きな影響を及ぼす。そこで、食品中の脂肪が微視的にどのような結晶状態をとっているかについて明らかにし、脂肪の結晶状態のイメージング技術の開発を行った。レーザーラマン顕微鏡で脂肪の結晶状態の異なる食品(冷蔵期間の異なる豚肉脂肪)のラマンスペクトルを取得し、結晶化度、結晶多形の量に対応するラマン分光指標のイメージを作成した。この方法によって実際の食品における脂肪の結晶状態について詳細な情報を得ることが可能となり、食品の品質管理・向上技術の開発に結びつくものと考えられる。
■ 北海道大学(佐藤久)
■ 支援機関 東北大学
重金属を瞬時に検出可能な蛍光色素(BDP-DPA)を開発した。BDP-DPAの合成は、最先端の合成技術を有するプラットフォームの支援を利用した。その蛍光極大波長は 591 nm であり、ブラックライト照射下において赤紫色の蛍光色を示した。Cr3+ やHg2+、Pb2+ など様々な重金属を添加すると蛍光極大波長はブルーシフトした。中でも BDP-DPA は Cr3+ に対し高い選択性を示した。このような金属イオンによる蛍光波長のブルーシフトは ICT(分子内電荷移動)機構により説明でき、このようなスペクトル変化はレシオメトリック測定によるイオン定量に適用可能である。
■ 富山県立大学(竹井敏)
■ 支援機関 大阪大学
微細加工プロセスにおいては、合成高分子化合物レジスト材料に有機溶媒が含まれていたり、アルカリ現像液が用いられたりするなど、環境への負荷が大きかった。そこで、植物性天然原料グルコースの水酸基末端に、極端紫外光に反応するアクリレート基を付与した糖鎖化合物を合成することにした。水現像性や水溶性、電子線照射による膜収縮性が、開発した水溶性レジスト材料の化学構造にどのように関係するのかを調べ、有機溶媒とアルカリ現像液を不要とする水溶性極端紫外光レジスト材料を用いたグリーン微細加工技術の開発につなげた。
■ 株式会社ココカラファインネクスト
■ 九州大学(後藤 雅宏)
化粧品の有効成分を肌の奥深くまで届けるために、有効成分を界面活性剤のコアで包み、油相にナノ分散化させる Solid-in-Oil(S/O)化技術を九州大学との研究により開発した。 Water-in-Oil(W/O)エマルションを利用して親水性成分の表面に疎水性界面活性剤をナノコーティングすることで、親水性成分を油状基剤中にナノサイズで分散させことができ、アスコルビン酸(ビタミンC)の経皮デリバリーに成功した。蛍光顕微鏡で皮膚の断面を観察した結果、 S/O 化技術によって皮膚中への浸透が促進されるという結果が得られた。
■ BTT 株式会社
■ 名古屋工業大学(江龍 修)
量産加工のための加工用刃物、SiC刃具開発を行った。名古屋工業大学では、半導体デバイス形成のためのCMP 加工砥粒を開発しており、その技術の活用と、プラットフォーム利用施設である MAT 社製エアスピンドル 40cm 研磨定盤と曲面形成治具を利用した。SiC を刃物用に専用に結晶成長させ、化学機械的研磨法により最表面まで単結晶面を表出させ、刃先丸み 20nm を実現した。単結晶に対する等方的な加工が初めて実現でき、機械精度限界の仕上がりを得ることができた。
■ 奈良女子大学
■ 奈良先端科学技術大学院大学 (野々口 斐之)
軽くて丈夫なカーボンナノチューブは通常はp型を示すが、それを安定なn型に変える一連の薬剤(ドープ材料)を発見し、非常に困難とされていたフレキシブルなn型熱電変換材料の開発に成功した。有機リン系化合物をドープ材料として組み合わせたところ、単層カーボンナノチューブ表面に自発的に固定化され、高性能なn型の熱電変換材料になった。今回開発したカーボンナノチューブ材料をプラス型とマイナス型材料の両方に使うことでフレキシブルな熱電発電シートの試作品が完成し、これが実際の曲面上でも発電動作して十分な電力を回収できることを実証した。
■ 日本電波工業株式会社
■ 千歳科学技術大学(カートハウス オラフ)
水晶発振器開発の技術を生かし、舌が感じるコクを苦味や甘味などの「味成分」として定量化する QCM(Quartz Crystal Microbalance)センサーシステムを開発した。舌の細胞膜を模倣した脂質膜をセンサー上に形成する際、ムラが生じるという問題があった。そこでプラットフォーム利用設備であるスピンコーター及び顕微鏡を利用し、表面観察を通じて塗布条件を検討したところ、ムラの無い膜形成に成功した。ビール 8 銘柄のコク官能試験と本センサーの計測で得られた周波数変化量は高い相関があることが分かり、コク定量の実用化可能性が示された。